「ブラック・スワン」
おお〜〜〜〜〜もしろいおもしろいおもしろいおもしろい♪
この監督さん「レスラー」も特異な世界を扱っていながら〜終わってみると普通に無難なお話で物足りなかったのだけれど。
今回も終わってみれば、これまでにもいくつかあった「ショウビジネスの迷宮モノ」で、ロイ・シャイダーの「オール・ザット・ジャズ」(演出家からの切り口でしたけど)とか日本の「Wの悲劇」とか思い出した。
ん〜でも「レスラー」が良くも悪くも安心して観ていられたのに対して〜本作のこのホラー趣向はどうですか!
近頃面白いホラー映画がないとお嘆きのアナタ! コレは楽しめますよ!
そ〜してここまであくまで主人公の心理とガップリ四つに組んで進んで行く映画は久しぶりのよな気がする。
極力説明や台詞を押さえ、あくまで映像映像で押して行く作りはいかにも映画を観ている醍醐味に満ちていて全く気持ち良い。
「白鳥の湖」って名前は知ってても、その内容まではあまり知られていませんよね。そんな人の為にあらすじをちゃんと観客に伝えてくれるのでご安心を。
それも含めてこの作品、何気に説明台詞が多く入ってたと思うんだけど、それを感じさせない様に上手い作りになっていました。
要は一人の王子を巡って、かつて人間だったのに悪魔の魔法で白鳥にされてしまったヒロインと、王子をたぶらかす為に悪魔が寄越した悪い黒鳥(ブラックスワン)が登場するのだけれど、白鳥と黒鳥は同じバレリーナが演じなければならない。
白鳥は純真で悲劇のヒロインしていれば良いのだが、黒鳥の方は男を誘惑し、悪の世界に引きずり込もうとする。欲望を掻き立てる妖艶な踊りが要求されるのだ。
ナタリー・ポートマン演じるヒロインは未だ禄に男性経験も無いウブなお嬢ちゃまで、白鳥を演じるには問題無いのだが、黒鳥の部分は何度踊ってもどうしても演出家からOKを貰えない。
ヒロインは自分には無い黒鳥のダークサイドな部分を得とくする為に、演出家に言われた通り自分でしてみたり! 生まれながらにそんな素養を持っていると言われる同僚ダンサーに誘われるままドラッグをやり、行きずりの男とエッチしてみたりする。
だが元々そんな素養ではない為に自己の中に生ずる拒絶反応に苦しみ、嘔吐するのだ。
そして果たせなかった夢を娘に託している母親は、そんな彼女の行動を許せず、激しく衝突する。
こ〜のヒロインの追い詰められ方が半端じゃない、というかそれこそがこの映画の見所なのだ!
それでもどうしても主役を演じたい彼女は、精神に異常をきたしながらも遂には暗黒面へと開花し、見事に黒鳥の演技を成し遂げる! 純真で真面目なお嬢さんが芸を極める為にダークサイドに足を踏み入れて行くノダ。
この変貌の見事なこと、ここで流れる「白鳥の湖」のボルテージは最高潮! 面白さに涙が流れた。
ついに黒鳥に変化した時ゃ〜悪? に開花したというのにこのカタルシスはどうですか! 思えばアナキンがダース・ベイダーになる瞬間もこうあって欲しかったですねぇ。
オレ等の世代だと「白鳥の湖」の音楽を聞くとドカベンの殿馬の秘打を思い出しますけど、クラシックの名曲というのは映画に良く映えますね。
才能=持って生まれたモノ。とするならば〜他人の持っているそれを後から得とくすることは出来ないですよね〜。
踊りもそうだけど、俳優はそれをやろうとするので本作の様な迷宮に入り込み、自分を追い詰めてしまうんですよねぇ。
し〜かしこの演出家! こんなのやるから〜芝居の演出家はみんなエロ親父だと言われてしまうんじゃないですか。
今回体重を落としたナタリー・ポートマンは、皆さん言われる様に、本当ヘップバーンに似ていますねぇ。作品ごとにこんなにも顔かたちまで変えてしまうというのは〜凄い女優さんかもしれませんねぇ。
も〜う今日はご機嫌で〜ニコニコしながら口笛吹いて帰って来ました。